12月14日(火)
各学年の国語科教材には、1年生の「くじらぐも」、2年生の「スイミー」、4年生の「ごんぎつね」のように、長年教科書に掲載され親しまれている物語作品があります。5年生の「大造じいさんとがん」も、その一つで、分かりやすい場面展開と、大造じいさんとがんで群れの頭領である”残雪”との競い合いと敬意からは、多くのことを子どもが学べる名作です。
一方で、科学的にはこのストーリーに異論を唱える見方もあります。がんを射止める作戦として、タニシでおびき寄せる作戦を大造じんさんは考えますが、がんはそもそも草食であること。残雪は仲間を守るため、ハヤブサと戦う場面がありますが、体格差が大きく、ハヤブサが大人のがんを襲うことはまず考えられないこと。これらのことから、大造じいさんがねらっていたのは、がんではなく、カモではないかという意見です。長年動物の狩りで生計を立てている大造じいさんが、がんとカモを間違えることは考えにくいので???と、不可解さが残るというものです。
文学と科学では、相容れないこともありますが、著者の椋鳩十さんが、読み手の子どもたちに伝えたかったことを考えると、一見かわいらしいカモではなく、翼をバシッと広げて悠然と飛び立つ「がん」にこだわった理由が見えてきます。
「まちがい」と決めつけるのではなく、子どもの前に立つ大人として、なぜそうしたのかを想像する力を持ち続けたい。科学(理科)と文学(国語科)のちがいをとらえながら、教材を生かす力も教師力(学習指導)の一つです。