3月28日(月)
「ぞうさん」などの童謡の作詞で知られる”まどみちお”さん(2014年没104才)の著に、「いわずにおれない」(2005年発行)があります。タイトルからは、古老による社会批判の本かと思われますが、内容はそうではなく、童謡の詞が生まれたわけ、まどさんが歌詞を通して伝えたかった自然のすばらしさ、尊い命、子どもへの願いが記されています。今回は、「ぞうさん」に託された思いを紹介します。
「ぞうさん」
「そうさん、ぞうさん、お鼻が長いのね。」と、鼻が短い動物たちが好奇心から尋ねます。ぞうさんの自己肯定感が低かったら、「からかい」「いじめ」ともとれる差別的質問ともなってしまいます。でも、母親の愛情にしっかり包まれているぞうさんは、「そうよ。母さんも長いのよ」と、屈託なく答えます。
「ぞうさん、ぞうさん。だれが好きなの?」と、他の動物たちが重ねて尋ねます。「あのね、母さんが好きなのよ」と、照れながら即答するぞうさんは、いつも愛を注いでくれる母さんの姿を目に浮かべながら自慢げに笑顔で答えます。質問した動物たちも、「そう、ぞうさんの母さんって素敵な人なんだね」という思いになることでしょう。
この歌詞への思いは、一人一人違っている子どもたちに「もっと自分に自信を持って生きていいよ」という、メッセージではないかととらえます。近年国語の教科書でも取上げられている”金子みすず”さんの、「みんなちがって、みんないい」と共通する願いがあると考えます。違いを魅力ととらえる大人の価値観があれば、子どもはかけがえのない自分の存在を肯定的にとらえ、唯一無二自分の道をしっかり歩くことができます。子どもにとって一番身近な存在である「家族と同じ」をよりどころにできる家族愛が、成長を支える最も必要な栄養であることは言うまでもありません。「そうよ、父さんも長いのよ」「そうよ、とっても便利なのよ」、そんな3番、4番が流れる社会となるようにしなければなりません(^_^)。